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ANDRA URsuŢa(アンドラ・ウルスタ)(1979-)

“Joy Revision” @ David Zwirner (London, UK)

ルーマニア生まれ、ニューヨーク在住のアンドラ・ウルスタのJoy Revision シリーズ。

写真技術が発明され、19世紀後半頃から世の中に出回るようになった合成イメージによるオカルト写真にインスピレーションを受け、創られたフォトグラムと彫刻オブジェで構成されている。

フォトグラムの先駆者としては、マン・レイ(レイヨグラフ)やモホリ=ナジ・ラースローが知られているが、ウルスタ のフォトグラム作品が、多種多様な技法と偶発的要素を組み合わせて制作されていることは特筆に値する。

彼女はカメラやレンズを一切使用せず、幾つかの素材を組み合わせ造られた自作の彫刻を、直に光反応性染料で処理されたベルベット布地の上に置き感光させ、このフォトグラム手法によって制作された複数のイメージを合成し、アナログ方式でプリント出力を行っている。

 

不気味な虹色のシルエットに浮かび上がった骸骨は、恐怖にかられ絶叫しているようだ。

その横には、バラバラに引き裂かれた体の一部が不自然に繋がっているように見える作品、そして英国の黒魔術者アレイスター・クロウリーを彷彿させる彫刻オブジェがニヒルな表情で佇んでいる。

確かに「薄気味悪い」「ホラー映画のようだ」という感想を述べている人々がいるのにも納得がいく。

でも実のところ一体、私達は彼女の作品に何を見出しているのだろうか?

21世紀の高度テクノロジーと現代科学によって、19世紀に比べ迷信を盲目的に信じる人は随分減ったと思う。でも巷の幽霊屋敷ツアーは盛況で、心霊現象が目撃された場所への関心は衰えることはなく、メディアの一面を飾る。

何故だろうか?人が未だに心霊現象に関心を持つのは、神秘に対する畏怖の念からではなく、エンターテイメント的な色合いがかなり強くなっているからだとも考えられる。

 

「オカルトはビジネス化している。だから毎年、新しい幽霊が心霊現象で有名な場所のラインナップに付け加えられるんだ」と20年以上もプロの幽霊ハンターとして活躍している人が話していた。そして「昔は、自分の本業がゴーストハンターだと言った途端、人は後ずさりし、あたかも取り憑かれるのを避けなくては、みたいに敬遠されたけど今は大歓迎さ」と苦笑していた。

 

でも観るものがウルスタの作品から強い印象を受けるのは、神秘に対する畏怖の念からでも、興味本位のオカルトビジネスでもない。

むしろ多くのオカルト現象が高度テクノロジーや最新科学で「偽造されたもの」と明らかになった現代にだからこそ、正真正銘、真に凍りつくような戦慄を孕む人間の持つ残虐さ、ウクライナ侵攻やイランの女性に対する不条理な凶暴さを象徴的に暴露し、表現しているのではないだろうか。

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